引越しには昔から日本各地に様々な「ならわし」や「しきたり」が存在しています。
引越しは人生においても大きな出来事である上に、生活基盤が大きく変わるので、元を担ぎたいという思いの現われかも知れません。
引越し先で、長く幸福に暮らすためにも良いスタートを切りたいと考えるのは当たり前のことです。
そこで、今回は引越しについての「ならわし」や「しきたり」とは?などの情報をお伝えしていきます。
目次
「ならわし」や「しきたり」とは?
そもそも、「ならわし」や「しきたり」とはどういったことを指すのでしょうか。
基本的にこれらのことは風習や慣習と一般的には考えられています。
しかし、実のところそのほんとんどが根拠や出自の不明なものであることがほとんどなのです。
結局、「ならわし」や「しきたり」理由や意味は分からないものの、何となく不安を払拭するために「やっておきべきなのでは?」と考えられているものだと思って良いでしょう。
また、宗教的な意味合い、特に土着信仰などに基づいたものも多いようです。
引越しに関しての「ならわし」や「しきたり」が史料として出てくるのは、江戸時代の中期頃です。
この「ならわし」は今でもポピュラーな「引越し蕎麦」についての記述です。
江戸という地域は、「火事と喧嘩は江戸の華」と言われるほど、家事や近隣トラブルで頻繁に引越しを余儀なくされていました。
そんな中で、せめて新天地では近隣とのもめ事を避け、末永く安全に暮らせるように生まれた「ならわし」だと考えられています。
引越しにおける「良い日」と「悪い日」
引越しの「ならわし」や「しきたり」で良く言われているのは、引越しに縁起の良い日、悪い日があるということでしょう。
日本では引越しに良い日は「大安」や「一粒万倍日」など、引越し以外の場合でも縁起が良いとされている日です。
「大安」は元々明治時代以前に中国から入ってきたもので「六曜」という時間を区切る際に使用されていたものです。
明治時代の暦改正によって、現代のように吉凶を占う指標とされました。
六曜では、引越しに良い日は「大安」ですが、悪い日は「仏滅」と考えがちですが、実は「赤口」も縁起の良くない日とされています。
また「先負」の場合、午前中が縁起が悪く、「先勝」では午後が縁起が悪いと考えられていますので、参考にして下さい。
引越し先で幸運を呼ぶアイテムとは?
引越しの縁起物のアイテムというものもあります。
その中でも、「オモト」「釜」「ほうき」は良く知られているものです。
「オモト」は「万年青」という字の常緑草で、新居に置くと縁起が良いとされています。
また、引越しで縁起が悪い日と言われている「赤口」の赤と反対の色ということで、引越しがやむを得ず「赤口」になった場合の対策品としても重宝されています。
「ほうき」に関しては、穢れを祓うという意味があり、更には引越し先での福を集めるという意味も持っています。
「釜」は新天地で食べるものに困らないようにという意味合いがあります。
引越し蕎麦は縁起物とされていますが、地域によってはうどんを食べる慣習もあるようです。
四国の一部地域では、新居の風呂に入りながらうどんを食べて元を担ぎます。
引越しで縁起の良い荷物の運び方とは?
引越しでは運搬方法も縁起を左右すると言われています。
ポピュラーなところを紹介しますと
1、神棚や仏壇の搬出は最後にし、搬入は一番最初にする
神棚や仏壇に関してはいかにも日本の風習らしいといえます。
搬出に関しては最後まで荷物の運び出しの無事を、搬入に関しては引越し先でつつがなく完了するのを見守って欲しいという意味があります。
もちろん、運ぶ際にも上に物を乗せない、シッカリと梱包するなど丁寧にすることは当然のことです。
2、婚礼家具を乗せたらバックしない
一部の地域では、嫁入り道具である家具一式をガラス張りのトラックに乗せて近隣を回るという風習があります。
この時、トラックは絶対にバックしてはいけません。
これは「出戻りしない」ということに由来しています。
3、醤油、味噌、塩などから運び入れる
この3種類に限らず、地方によっては様々な食べ物を最初に搬入するという「ならわし」があります。
これは、単純に食べることに困らないよう、飢えないようにという願いが込められています。
4、まず吉方向へ向けて出発する
風水などに興味のある人は、吉方位や凶方位などが気になるのではないでしょう。
風水に限らず、昔から日本でも吉方位や凶方位という考え方が根付いている地域もあります。
たまたま出発先が吉方位の場合はそのままでも構いませんが、そうではないケースではぐるりと迂回して吉方位へ向かいながら新居へ入るという場合もあります。
まとめ
今回は引越しについての「ならわし」や「しきたり」とは?などの情報をお伝えしてきました。
「しきたり」や「ならわし」というものには確たる根拠があるものは少ないのですが、せっかくの新しい門出にもなる引越しですので、少しでも気持ち的にスッキリした状況で新生活をスタートしたいものですね。
全てのことをする必要はありませんが、気になることは実践すると良いかも知れません。